地域の人たちからのメッセージ
「先生循環器だから
そんなこと聞いちゃ駄目よ」
循環器内科から総合診療に転向したのは、医者で言うと8年目のときです。もちろん毎日やりがいを持ちながら仕事をしてたんですが、専門科はやればやるほど奥が深くなっていくというか。ズボズボとはまっていくと、それ以外のことがほとんど分からなくなってくるんですよね。専門医の在り方としてはそれでよかったんですが、僕はその過程で、どういうわけか違和感を持ってしまったんです。
例えば外来に患者さんが来られて一通り心臓についての診察を終えたところで、「先生、ちょっと最近こんなブツブツ出てきて」と相談されたりします。すると付いてきてた奥さんが間髪入れず「先生循環器だからそんなこと聞いちゃ駄目よ」って患者さん本人に言うんです。僕はそれがやだなって思っちゃったんですよ。それが転向理由の一つです。
もう一つは、子どものことです。生まれてすぐに気管支炎で入院したんです。妻は悪化する前に僕に相談していたんですが、ただの風邪だろうと思って高くくっていたら、あれよあれよと状態が悪くなって入院して酸素テントに入って。自分の子どもも診られないのも医者としてどうなんだと。幅広く診るっていうところを自分自身はやりたいんだろうなあと気付いたんです。
村のすべての子の
成長過程に関わる醍醐味
更別診療所の大きな特徴のひとつは、地域全体の乳幼児健診を請け負っているところです。要するに赤ちゃんからの成長発達を見届ける。で、その中で異常を早い段階で発見する。僕が人事異動でこの診療所を希望したのは、その力を鍛えるチャンスだと思ったからです。
あとは山田院長が、思春期や不登校の——子どものちょっとメンタルにも影響出てるような病気の——ケアをされていることが僕をひきつけました。こっちに来て実際驚いたんです。学校の先生がここに相談に来られるんですよ。
「最近この子があんまり学校に来られていない」と相談されると、一通り話を伺った後、山田先生が「そしたらちょっと一度診療所に来てください」と親御さんも含めて面談です。つい最近もあったんですけど、それを繰り返していくとまたちゃんと通えるようになっていくっていくのを目の当たりにして。それは更別ならではというか。子どもの発達、成長の過程の社会的側面を含めた問題に関われるところは非常に大きな特徴だと思います。
解決方法は1種類ではないから
複眼的に検討する
循環器内科から総合診療に変わって集中的に教えていただいたことは、外来の面談の仕方です。循環器のときは心臓の病気をうまくコントロールするために面談し、診察や検査をしてマネジメントしての繰り返しだったんですが、総合診療は診る幅が全然違いました。特にご高齢の患者さんは複数の健康問題持っているので、その全てに目を向けなければいけない。さらに、どういう外来を行えばより満足して、幸せになって帰ってもらえるかを中心に面談します。患者中心の医療の方法や家族志向ケア、統合ケアなど、そのための考え方の枠組みを教えてもらい、外来の中でいかに実践していくかを勉強しきました。
総合診療は教育も特徴的です。すごくシステム化されているのと、振り返りをすごく大事にする文化が。患者さんに対して医療行為を行なったら、定期的にカンファレンスを開いて指導医の先生と相談します。指導医と振り返ると、自分自身が何を悩んでいるのかを言葉にしなきゃいけないんですね。ぼんやとり感じるのではなく、言葉に出すことでモヤモヤとしてたものがクリアになります。
また、解決方法は1種類じゃないので、複数の枠組みから、こういう情報を仕入れると次行動取れるよねとか、こんな働きかけをすると次道が開けるんじゃないかとか。ヒントをもらいながら、診療を味わい尽くすと言ったら患者さんに失礼ですけれども、そこが一番大きな学びになました。
山田医師に関係する人々