総合診療専門医が
求められる理由
総合診療専門医が
日本の医療に求められています。
なぜなのでしょう?
人類の歴史は医学・医療の進歩を背景にした疾病との闘いでもあります。科学技術の進歩は、さらに加速度を増し、私たちは多くのものを享受しています。医療においては、進歩とともに高度化、専門分化し、私たちが担当する医師としての領域はより狭くなっています。その結果、臓器単位や疾病単位で病を考え、「臓器は人体の一部にしか過ぎない。」という当たり前のことが忘れられがちになっているのです。日本プライマリ・ケア連合学会は、前身の3つの学会、日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本病院総合診療医学会の時代から、高度医療、臓器あるいは疾病別の専門医療はもちろん大事だけれども、人間中心の医療・ケアを決して忘れてはならないと声を上げてまいりました。
総合診療専門医の「総合」の意味するものは、内科や小児科などのあり
ふれた病気の診療を広範囲に行うという意味だけではなく、その本質は、高度に細分化した医療に対する、文化史、科学史、医療史的な反省に基づく、世界的な潮流が底辺にあるのです。
加えて、我が国は未曾有の高齢社会を迎えており、それによる社会の変化が、医学や医療そのものを、疾病の診断と治療という単純な図式ではなく、社会医学的、あるいは、プライマリ・ヘルスケアの視点から捉える必要にせまられています。これらの課題を乗り切るために、日本ではじまった地域包括ケアシステムの要は、まぎれもなく医師です。包括的統合アプローチの方法論を学び理解した総合診療専門医が先導的な役割を果たし、人々のために地域の医療を、プライマリ・ケアを強化しなくてはなりません。
人類の歴史は医学・医療の進歩を背景にした疾病との闘いでもあります。科学技術の進歩は、さらに加速度を増し、私たちは多くのものを享受しています。医療においては、進歩とともに高度化、専門分化し、私たちが担当する医師としての領域はより狭くなっています。その結果、臓器単位や疾病単位で病を考え、「臓器は人体の一部にしか過ぎない。」という当たり前のことが忘れられがちになっているのです。日本プライマリ・ケア連合学会は、前身の3つの学会、日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本病院総合診療医学会の時代から、高度医療、臓器あるいは疾病別の専門医療はもちろん大事だけれども、人間中心の医療・ケアを決して忘れてはならないと声を上げてまいりました。
総合診療専門医の「総合」の意味するものは、内科や小児科などのありふれた病気の診療を広範囲に行うという意味だけではなく、その本質は、高度に細分化した医療に対する、文化史的、科学史、医療史的な反省に基づく、世界的な潮流が底辺にあるのです。
加えて、我が国は未曾有の高齢社会を迎えており、それによる社会の変化が、医学や医療そのものを、疾病の診断と治療という単純な図式ではなく、社会医学的、あるいは、プライマリ・ヘルスケアの視点から捉える必要にせまられています。これらの課題を乗り切るために日本ではじまった地域包括ケアシステムの要は、まぎれもなく医師です。包括的統合アプローチの方法論を学び理解した総合診療専門医が先導的な役割を果たし、人々のために地域の医療を、プライマリ・ケアを強化しなくてはなりません。
日本が抱える喫緊の医療的課題には、
どのようなことがあるのでしょうか?
高齢化と少子化が
人口減少と同時に進行
他国が経験していない未曾有の日本の高齢社会は、少子化も伴っており、そのことにより、日本の人口は、地域による違いはあるものの減少に転じています。つまり、高齢化は進み、生産年齢人口は不足し、人口は減少するのです。これらがもたらす、社会構造の変化は、医療のあり方、地域の医療的な課題に対するシフトそのものが変わることを求めています。これまでのように、専門分化した医療のみの対応で地域の医療を守ることは困難になっています。例えば、小児の少ない地域では、小児科の専門医療は運営が困難です。子育てにも大きな影響があります。では、どうすればいいのでしょうか、そこに、きちんと教育を受けた総合診療の必要性があるのです。その学術的な専門性を示すものが総合診療専門医です。
疾病構造の変化
高齢化は必然的に疾病構造の変化をもたらします。多くの人は長命となり、慢性疾患と長く付き合うことになります。加えて、多くの高齢者は複数の疾病に罹患しています。加齢により一人が罹患する疾病は多くなります。最近のデータでは、一人あたりの疾患数は、65才未満で2.3、65才以上で4.6といわれています。一人あたりの受診診療科数も、65才未満で2.5科、65才以上で4.3科と多くなっています。複数の診療科の受診を余儀なくされていることがわかります。加えて、認知症や精神的な問題を抱えた方、フレイル(虚弱)の方も多くなっています。通院自体が困難なのです。
このように多疾病罹患の方に対して、その方の医療の適切な相談者にどのような医師がなるべきなのでしょうか。それぞれの疾病に対応する、それぞれの医師は最適な判断をしているのですが、複合的な課題を解決しようとするために、標準的な臨床教育を受け、経験を有する医師が必要になってきています。総合診療専門医は、多疾病罹患に対応するばかりでなく、ご本人にとって最適な医療や介護の方針を包括的に解決します。
診療の場の多様化
疾病構造の変化、社会構造の変化は、必然的に診療の場の多様性をもたらしています。可能な限り住み慣れた家庭や、それに準ずる場所で、治療を継続したい、という患者さんの当然の願いは最も大切なものです。しかし、介助を必要とするなどの、認知症や身体的な理由をお持ちの方も、そして、家計の厳しさからなかなか受診できない方もいらっしゃるのです。一方で在宅医療に取り組んでいている医療機関はまだ不足しています。
医療的課題があるのに、診療所や、病院を受診することができない方、さらに、在宅医療へのアクセスも困難な方にも、診療の場の多様性を確保して、シームレスな医療を実現しなくてはなりません。私達が診るのは、地域で医療課題をかかえて生活している全ての人々なのです。そのためには、疾病予防、健康増進にも取り組まなくてはなりません。
限りなく増大する
医療費負担
働く世代の減少は経済成長を困難にしています。医療技術の進歩の結果としての医療コストの高騰は、医療の必要とする高齢者の増加とあいまって、医療費の増大をもたらしています。医療の要する財源は有限なものです。医療財源を大切にするという共有する意識が、医療提供側にも受療者にも求められています。医療費負担の増加は、負担増に苦しむ家庭を生み出しています。ありふれた病気の診療を適正に行うプライマリ・ケアの力量が高まれば、医療費に良い効果をもたらします。総合診療専門医は、医療資源の適正利用の大切さを学びます。先進国のデータからも、プライマリ・ケアの強化が医療資源の適正使用につながることがはっきりしています。プライマリ・ケアの強化の学術的専門性を表す総合診療専門医は、医療の公益性を職業規範として実践し、持続可能性のある力強い日本の医療の先導役です。
医師や医療施設、診療科の
地理的偏在
小児の極めて少ない地域では、遠方の小児科までの受診を余儀なくされます。産科婦人科も同様です。このような地域での専門科での医療施設の運営は困難です。人口減の地域の諸問題は医療のみでは解決しませんが、身近にある医療が生活の必須条件であることは確かです。どうしたらいいのでしょうか。小児科専門医との協働での、ありふれた小児の病気をきちんと診断し治療する総合診療専門医が身近にいたらどうでしょうか。総合診療専門医は地域の医療の持続可能性の切り札とも言えます。
健康リテラシーの危うさと
医療に対する期待の高まり
情報化社会の現代では、医療的な話題もあっという間に世間に広がります。しかし、医療は個別な特異性があり、その方によって必要なものが異なります。情報過多の中で、ご本人やご家族の健康リテラシーの正確さは、誤った医療の選択を防ぐ力になります。また、当然ながら、誰もが、最高の医療を望みます。医療に対する人々の期待値は高まるばかりです。総合診療専門医はその方の健康リテラシー形成の助言者となり、適正な医療選択の相談者でもあるのです。このことこそが、疾病予防や、適正受診につながるのです。