—総合診療医ルートマップ—
10年後にあなたは
どこで、どんな総合診療医を
していますか?
総合診療医のキャリアパスは多岐にわたります。
病院、診療所、在宅専門で活躍できることはもちろん、
都市部、へき地など場所を限定せず働けることも特徴です。
またフェローシップとして特定テーマを深めたり、
公衆衛生や医学教育での博士課程への進学、海外への留学、
または開業したりといった道もあるでしょう。
ここでは、総合診療医として活躍する医師経験14年目までの
若手・中堅医師に10年後の姿をイメージしてもらいました。
また、医師経験15年以上のベテランの医師からは、
これまでどんなキャリアを積んできたのかをお聞きしました。
若手・中堅総合診療医
香田 将英医師
熊本大学大学院生命科学研究部公衆衛生学分野/
熊本大学医学部附属病院地域医療・総合診療実践学寄附講座
(医師経験3年)
生活習慣病の問題の解決には、地域の現状と課題にあわせた社会学的手法での介入施策が必要となってきます。私は公衆衛生学の立場から生活習慣病予防や生活衛生、保健介護福祉などの研究・分析を行い、地域特性にあわせた介入施策を考え、「病気の上流」にアプローチできる総合診療医を目指したいです。
- 1年後
- 学位取得、総合診療専門医後期研修プログラム開始
- 社会学系専門医プログラム(早期修了)開始
- 4年後
- 総合診療専門医取得
- 7年後
- インターンシップなどで厚生労働省勤務
- 10年後
- 再度地元に戻る
2014年熊本大学卒.同年同大学柴三郎プラグラムを利用し大学院(生命科学研究部)博士課程へ入学,同年同大学病院初期研修医, 2016年より現職。
長谷田 真帆医師
東京大学大学院医学系研究科 社会医学専攻 博士課程/
佐久総合病院付属小海診療所非常勤
(医師経験10年)
病院や診療所での研修で健康格差の存在に問題意識を持ち大学院に進学。ここで日常診療に活かすことができる知見を蓄え、逆に日常診療で感じる疑問の解消や患者さんやスタッフとの交流による癒しが研究に向かうモチベーションになっています。将来は家庭生活・研究・臨床・教育のどれも手を抜かず過ごしていきたいと思っています。
- 1年後
- 学位取得、研究者として就職
- 数年後
- スウェーデンorイギリスへ留学
2007年北海道大学卒、同年手稲渓仁会病院総合内科系コースにて初期研修開始。2010年佐久総合病院地域医療部にて後期研修開始。2014年より現職、佐久総合病院付属小海診療所にて非常勤。
遠井 敬大医師
埼玉医科大学総合医療センター 救急科(ER)勤務
(医師経験11年)
父親が外科医で当時は開業医は外科医と言っても内科・小児科・整形外科・救急・在宅など求められればなんでも診ていたと思います。そんな父親の影響から、「目の前の困っている患者さんを断らない医者になりたい」と考えるように。目標は家庭医療クリニックを開業すること。そして地域の健康寿命を改善していきたいです。
- 2年後
- 大学院卒業・学位取得(総合診療医学分野)
- 3年後
- 公衆衛生の専門分野をさらに学ぶ
- 5年後
- 埼玉県で家庭医療のクリニック開業
- 10年後
- 埼玉県で家庭医療の教育施設・プログラムを構築
2005年埼玉医科大学卒。埼玉医科大学総合医療センター初期研修、東京医科大学総合診療科家庭医療後期研修を経て、2011年日本プライマリ・ケア連合学会認定 家庭医療専門医取得。2011年4月〜2016年3月 川崎セツルメント診療所 所長。2015年4月東京医科大学大学院 医学研究科博士課程 総合診療医学分野 入学。2016年4月より埼玉医科大学総合医療センター 救急科(ER)勤務。
濱井 彩乃医師
安房地域医療センター総合診療科
(亀田ファミリークリニック館山 家庭医診療科より出向)
(医師経験11年)
剣道のチームドクターやトライアスロンの大会救護を今も続けています。スポーツ医学は家庭医療と親和性が高く、かつ日本では未開拓の部分が多い領域。筋骨格系のみならずメンタルも含めた様々な関りが有用です。家庭医としてスポーツ医学を実践しながら様々な年代の人たちへの関わりを続けていきたいと考えています。
- 1・2年後
- IOC sports medicine diplomaコースを受講
- 3年後
- 東京オリンピックに何らかの形で関わる
- 5年後
- スポーツ医学領域の研究論文を出版する
2006年京都大学卒。同年国保旭中央病院初期研修医、2008年同内科専修医。2010年より亀田ファミリークリニック館山家庭医療後期研修プログラム、2013年同Faculty Developmentフェロー、2014年同スタッフ。2015年森の里病院内科に出向し、2016年より現職。家庭医療専門医、在宅専門医、日体協公認スポーツドクター。
今立 俊輔医師
医療法人みらい 今立内科クリニック勤務
(医師経験12年)
医師4年で離島診療所に赴任しました。そこでは幅広い診療能力も必要でしたが予防医療など地域の中で実践する力も求められました。実際に地域に出でてみると専門職としての知識や技術だけでは不十分で、時には住民と共に考え協力しながら活動する力も必要でした。離島で学んだ「地域と関わりつづける医療」の実践を目指しています。
- 3年後
- 周辺地域の住民を対象とした講演などを企画開催
- 5年後
- 地域医療教育施設として後進の育成に関わる
- 10年後
- 地域で子供から高齢者まで関わり続ける
2005年久留米大学医学部卒。国立病院機構 長崎医療センター 初期研修医。初期研修終了後は同院 総合診療科レジデント。「地域を丸ごと診たい」と思い、2008年から五島列島の離島診療所である小値賀町国民健康保険診療所に勤務。3000人の島で地域医療に従事。2011年 長崎医療センター 腎臓内科レジデントとして再研修。腎疾患管理と透析管理を経験。2012年 家庭医療専門医。2013年より同院 総合診療科 指導医。長崎県離島へき地支援センター 専任医として離島診療所の診療支援、長崎県の医師受給調査事業などにも関わる。2015年より 実家である 今立内科クリニックに勤務。
次橋 幸男医師
天理よろづ相談所病院 地域医療連携室、在宅世話どりセンター/天理医療大学 医療教育・研究センター
(医師経験13年)
急性期病院で判断能力のない高齢患者に高度医療が日常的に行われていることに疑問を感じました。この問題の解決には心の通った継続ケアの提供体制、地域医療ネットワークが重要だと考え、現在、その実現に向けて診療のかたわら、大学院において地域医療ネットワーク構築に向けたマネジメント業務、研究、教育に取り組んでいます。
- 1年後
- 医療政策に関わる地域医療分析(特に在宅医療領域)、政策立案のプロセスを学ぶ
- 4年後
- 博士号取得
- 5年後
- 地方都市で地域医療ネットワークを推進させる研究、教育、マネジメントの実践
- 15~20年後
- 家庭医療領域の研修後、診療所において臨床医として働く
2004年佐賀医科大学卒業。天理よろづ相談所病院ジュニアレジデント。2006年内科系シニアレジデント(内科ローテート)。2008年チーフレジデント。2010年京都大学大学院社会健康医学系専攻臨床研究者養成コース修了 (M.P.H)。2010年 天理よろづ相談所病院総合診療教育部(2013年まで)、在宅世話どりセンター医員。2011年地域医療連携室医員(兼任)。2016年米国南カリフォルニア大学大学院(ビジネススクール)医療マネジメント修士過程修了(M.M.M)。2016年天理医療大学医療教育・研究センター特任講師(兼任)。
資格等:総合内科専門医、在宅医療専門医、プライマリ・ケア認定医/指導医、介護支援専門員、社会健康医学修士(M.P.H)、医療マネジメント修士(M.M.M)
ベテラン総合診療医
小松 裕和医師
佐久総合病院 地域ケア科勤務
(医師経験15年)
今の職場で在宅医療と出会い、在宅医療分野におけるプライマリ・ケアと公衆衛生学の実践に引き込まれていきました。現在では、人生の最後を支える緩和ケアから、家族や遺族まで関わる取り組み、地域の事業所を越えた仕組みづくり、つながりと社会参加を意識したまちづくりまで活動が広がってきました。
2002年岡山大学卒。同年岡山大学大学院衛生学・疫学分野博士課程。2003年同大学院休学、佐久総合病院研修医。2006年同大学院復学。2009年同大学院卒業、佐久総合病院地域ケア科。2012年同地域ケア科医長。2016年同地域医療部副部長。現在は長野県医師会在宅医療推進委員会副委員長、日本在宅医学会研究学術委員会委員、長野県在宅医療推進都道府県リーダーを務める。日本在宅医学会第1回佐藤智(さとうあきら)賞受賞、日本プライマリ・ケア連合学会認定医/指導医、日本公衆衛生学会認定専門家。
石丸 直人医師
明石医療センター 総合内科勤務
(医師経験16年)
「これから医師になる人には、肉体的なところだけでなく、精神的、社会的、霊的なところにも関わることのできる人になってほしい」という高校生時代に聞いた三宅廉医師(神戸元町のパルモア病院創設者)の言葉が今の私の原点です。これは、今でも自分が医療に携わる原動力となっています。
2001年より城南福祉医療協会大田病院内科、2003年より川崎協同病院小児科研修医(3ヶ月)。2006年より筑波メディカルセンター病院 地域医療コース専修医(総合診療科 5ヶ月、緩和医療科3ヶ月、呼吸器内科4ヶ月、整形外科4ヶ月、麻酔科2ヶ月、放射線科3ヶ月、救急診療科4ヶ月)、2008年より筑波大学附属病院クリニカルフェロー(感染症科2ヶ月・総合診療科3ヶ月)、2008年筑波メディカルセンター病院地域医療コース専修医(小児科3ヶ月)、2009年独立行政法人霞ヶ浦医療センター産婦人科医師(3ヶ月)、2009年より筑波大学附属病院総合臨床教育センター病院講師。筑波大学附属病院在籍中に、週1回の単位で、産婦人科外来研修6ヶ月、心臓超音波研修6ヶ月、皮膚科外来研修3ヶ月、耳鼻科外来研修3ヶ月、精神科科外来研修2年間行う。2012年より明石医療センター内科医長、2015年より同総合内科医長。
木村 琢磨医師
北里大学医学部 総合診療医学・地域総合医療学/
北里大学東病院 総合診療・在宅支援センター
(医師経験20年)
医学生時代に、診療所や在宅医療の現場にふれる機会があり、とくに鈴木荘一先生の臨床理念に感銘を受け今の道を目指しました。多くの先輩方のご指導、背中をみる機会があり、教育・研修の重要性を実感。同一の地域で、卒前・初期研修・後期研修と継続して総合診療医を志向する教育・研修こそが必要ではないかと思いが強くなっています。
東邦大学の医学生時代に、診療所実習、在宅診療実習、ホスピス実習で、総合診療医のやりがいを感じました。1997(平成9)年3月、東邦大学医学部卒業。1997(平成9)年5月、国立東京第二病院の臨床研修医(総合診療方式)となり、外科、小児科、麻酔科、産婦人科、救命救急センターを含めたローテート研修を行いました。1999(平成11)年4月 国立病院東京医療センター総合診療科レジデントとなり、二次・三次救急、耳鼻科・皮膚科・泌尿器科などの外来研修、エコー研修も経験しました。また、診療所での非常勤での診療や、診療援助で幾つかの病院での診療も経験しました。2002(平成14)年4月、国立病院東京医療センター総合診療科医員として、研修医・後期研修医と研鑽する機会を経て、2006(平成18)年4月 国立病院機構東埼玉病院総合診療科へ移り、在宅医療も含めた総合診療部門の立ち上げを行い、厚生労働省在宅医療連携事業も経験しました。その間、豪州ニューキャッスル大学大学院(通信教育コース)で臨床疫学を学ぶ機会を得て、2010(平成22)年10月修士課程を修了。2012(平成24)年3月、東邦大学大学院医学研究科博士課程を終了しました。2012(平成24)年4月三重県立一志病院家庭医診療科部長、その後、再び、2012(平成24)年7月、国立病院機構東埼玉病院総合診療科医長を経て、2013(平成25)年7月、北里大学医学部総合診療医学へ移りました。現在は、北里大学医学部相模原市寄付講座「地域総合医療学」特任准教授と、 北里大学東病院総合診療・在宅支援センター長も併任しています。
石田 岳史医師
社会医療法人さいたま市民医療センター内科勤務
(医師経験24年)
医師が自らの専門性に合致する患者ばかりを集めて診療していることに違和感を感じたことがきっかけです。しかし、総合診療医を目指したわけではなく、目の前の困っている人への対応をくり返した結果、たまたま総合診療医になっていたのだと思います。
1993年自治医科大学卒。同年兵庫県立淡路病院研修医。1995年公立浜坂病院、1998年自治医科大学附属さいたま医療センターシニアレジデント。2002年自治医科大学総合医学第一講座助手。2006年神戸大学大学院医学研究科内科学講座へき地医療学分野特命准教授。2009年自治医科大学総合医学第一講座学内教授、さいたま市民医療センター内科診療部長を経て2016年よりさいたま市民医療センター副院長。
二ノ坂 保喜医師
医療法人にのさかクリニック勤務
(医師経験40年)
国民が本来望む、在宅での生と死。それに医療界が応え切れていない現状。また、死と死に逝くことが生活から離れることで、死を見つめて生きるといったいのちの文化が衰えています。在宅ホスピスの質の向上、国際的視点と広がりは、人々のいのちを受けとめる運動として、世界的な広がりが期待されます。
1977年長崎大学卒。同年長崎大学病院第一外科研修医。79年大阪府立病院救急部、80年下関・小倉の池友会関連病院、83年長崎県北松浦郡の青洲会病院院長として地域医療に従事、88年福岡市に移り、福西会病院副院長、96年にのさかクリニック開設し現職。