医師たちからのメッセージ
患者の全体像を捉えられる医師が
必要とされている、と実感
僕は以前消化器内科の専攻医をしていました。内視鏡検査が好きで最初は働いていたんですが、内科医として問診を取ったり、鑑別疾患を考えながら身体所見を取ったりする機会が全くなく、そういう総合診療的な力をつけたいと思うようになりました。そんな時に、京都で開かれた勉強会に川島先生が演者としていらして、教育や総合診療医の特性を初めて学ばさせていただきました。「この先生だ」と思って講演が終わった後すぐにご挨拶に行き、この病院を見学させてもらったんです。
総合診療の専門医化の目的もそうですが、これからは幅広く患者さんの全体像を捉えられるような医師の育成、数の確保が必要だと考えています。例えば出血性の胃潰瘍で入院になった高齢者の方がいるとします。胃潰瘍は止血の処置でコントロールができて良くなっても、認知症があったり、実は嚥下機能障害があって食事の摂取が不安定だったり、喫煙者で肺気腫があったりと、複数の疾患を抱えていることが多いです。高齢化が進むとこうした方はさらに増加します。そこは専門の内科医だけでは、診療をカバーできないと思うので。
また専門の先生方だけだと、診断がつかない病気もあるんですね。診断がつかないと治療方針が立たないので、やはり問診や身体所見から鑑別疾患を考えて、診断を導き出す力が求められます。診断がつくと治療方針が立つので、総合診療医という存在は、ほかの専門医にはない能力があると思っています。
短時間でも
強弱つけて学べる環境
この病院には、若手の先生を教えられる良質な環境があります。総合診療の先生はみんな教え好きで、若手に教えることで自分も逆に学んでいくという姿勢があります。
身体所見のことなどは、教科書にはどこが大事でどこがあまり大事じゃないか強弱をつけて書いてないので覚えるのはすごく大変ですが、川島先生は身体所見の小テストという勉強会で、「こういった身体所見が大事だよ」とか「これはそこまで大事じゃないから覚えなくていいよ」と強弱をつけて教えてくださいます。実践的で、実際の外来診療や入院してる患者さんの身体所見をとるときに非常に役立っています。
また総合診療の領域には、スナップダイアグノーシスという手法があります。患者さんの症状や背景のキーワードから疾患を想起するんです。そういう疾患の特性なども、お昼のレクチャーの時間に教えていただいています。
現場では2週間に1回ある全体回診で、入院患者さんを一人ひとり回りながら身体所見を取るのですが、その身体所見を若手の先生と一緒に取っています。常にいろんな議論をしながら回っていて、それが非常に勉強になります。
自分が教える立場の場合は、研修医の先生方もやる気があって優秀なので、こちらもやる気が出るというか――上級医にとっても学ぶことなんですね。自分の知識のアップデートや確認のためにも、若手に分かりやすく解説することが自分の教育になるんです。
臨床研究もできる
秀でた教育力がここにある
この病院には総合診療(家庭医療)の専門医、指導医の先生が2人いらっしゃいます。その先生方が年に4、5回ほど臨床研究のワークショップを開いています。実際臨床研究というのはどういうものなのか、文献をどのように検索するのか、研究を進めてくのかとなどを教えてもらいながら、みんなで議論をしながら学べる機会があります。意識して研究ができる環境をつくってきた川島先生おかげだと思います。
いくら病院が大きくて設備が整っていても、教育力、若手を育てる良い環境がないと、なかなか医師も集まってきません。そういった意味で福知山市民病院は教育力がある。教育の再生ができている。この病院の魅力の一つだと思っています。
川島医師に関係する人々